【ブランパン】高級機械式時計の教科書と言っても過言ではない時計をご紹介。~時代を超えた正統性~
皆さまこんにちは。
いつもoomiya京都店のブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
本日は世界最古のブランド【ブランパン】をご紹介させていただきます。
価格の高いイメージをお持ちの方も非常に多いブランドではありますが、その存在意義を丁寧に紐解いていくとご納得いただけるクオリティーを提供できる稀有なブランドですので、最後までお付き合いいただければと思います。
Made in Vallée de Joux
京都という土地柄もあり観光で来られるインバウンドの方にお話をお伺いしていると、服などを買う際の決め手に「made in Japan」だからとお答えいただくことが度々あります。
たしかに私も同じ金額で選べるのであれば「made in Japan」を選ぶ傾向にあると思います。
絶対というわけでもないのですが、日本製ということでクオリティーに安心感があったり、食品だと安全面も考慮したりすると思います。
その安心感は一朝一夕で作れるものでもなく積み重ねた歴史の中で信用と信頼を勝ち取ってきた証です。
では表題にもある「Made in Vallée de Joux」とは…。
「Vallée de Joux」とは上記のスイスの地図の左下に赤い枠で囲った地域の名称です。
たまに雑誌などでは「ジュウ渓谷」として記されている土地です。
なぜこの土地が記事に取り上げられるのかというと、この「ジュウ渓谷」は時計作りの神が宿りし土地だと個人的には思うからです。
ジュウ渓谷という場所
「ジュウ渓谷」には誰もが知るブランドがあります。
3大ブランドに数えられる「オーデマ・ピゲ」や天才時計師の名を冠した「ブレゲ」、ムーブメント開発の達人「ジャガー・ルクルト」世界最古のブランドである「ブランパン」。
このようにすでに歴史に名を遺すことに成功しているブランドが軒並みジュウ渓谷に集まっています。
またそれを支えている「レマニア」「フレデリック・ピゲ」といった世界最高峰のムーブメントメーカーも存在しています。
さてこのブランドに共通している点は何か…。
それは「トゥールビヨン」や「パーペチュアルカレンダー」「ミニッツリピーター」などの3大複雑機構を独自開発することが出来たり、それらを組み合わせた「グランドコンプリケーション」を作成出来たりと圧倒的な技術力を持っている点です。
その中で今回ご紹介の【ブランパン】はこの土地の正統性を象徴するブランドの一つとなっています。
ブランパンの正統性
先程にもお話しましたが、「made in Japan」だからと言って安心できるわけではなく、そこに裏打ちされた歴史があってこそだと思います。
その点【ブランパン】は世界最古の歴史を持ちながら一度はクオーツショックのあおりを受けて休業に追い込まれるといった唯一無二のブランドです。
特に休業してから復活するまでの歴史は物語の主人公のような見事なものでした。
そんな落ち込んでいる状態の【ブランパン】を救った会社こそが【フレデリック・ピゲ】という世界最高のムーブメントメーカーの名をほしいままにしていた超大手企業です。
【フレデリック・ピゲ】は当時最薄のクロノグラフムーブメントを作成しており、とあるブランドでは当時の価格で300万円以上の時計以上にしか採用しないといった超高級ムーブメントを手掛けていました。
現在も600万円程の時計の裏蓋を開けると【フレデリック・ピゲ】製のムーブメントが入っている事も珍しくはありません。
そもそも【ブランパン】が休業することになったのはクオーツショックが原因です。
クオーツショックは安価で大量生産が出来、時間も正確といった機械式時計には天敵ともいえる時計の出現によって引き起こされた時代の波でした。
当時でのスイス業界の打撃は想像以上で仕事を失った人は時計業界の2/3とも言われています。
休業から立ち直る為に必要なこと
【ブランパン】という名前がいくら有名でも立ち直る為には多大な労力が必要でした。
当時休眠中の【ブランパン】を買収した「ジャンクロードビバー氏」は【フレデリック・ピゲ】を巻き込み大改革を行います。
それが今では有名なブランパンの「シックスマスターピース」の開発です。
普通のムーブメントの開発というのは現在のコンピューターを使用しても2年~5年以上の歳月が当然掛かります。
さらに最低2年以上の歳月をかけて開発したムーブメントを作成すると一度は燃え尽き症候群の様になりますよね。
【ブランパン】が奇跡的に堂々と復活できたのは普通のムーブメント以上に開発に時間が掛かる3大複雑機構を含めた6種類(シックスマスターピース)を毎年1種類ずつ発表するという離れ業をやってのけました。
私実家が農家なので田んぼを一年間放置するとどうなるかを調べてみたことがありますが、一年放置すると三年間は土を入れ替えたりして土に栄養を蓄えさせる必要があるそうです。
それなら一度手放した田んぼよりも新しく田んぼを作る方が何倍も楽だと聞いたことがあります。
それは田んぼの話に留まらず、【ブランパン】の復活についても同様だと考えられます。
この【ブランパン】の圧倒的な復活劇はブランパンのみならず高級機械式時計の歴史すら変えてしまう衝撃がありました。
今後衰退していくだろうと誰にも思われていた機械式時計ですが、決して最新とは言えないような古典的な良さを再度認知されたことで現在の時計業界はさらなる盛り上がりを見せています。
まるで映画の主人公のような再登場で業界の主役に躍り出ていきます。
魂は細部に宿る
【ブランパン】の時計を語るうえで一番必要なことそれはお客様に媚びない事です。
昨今価格改定もあり時計の金額は年々向上していますが、まだまだブランパンの本当の価値に追いついていません。
その証拠を最後にご紹介致します。
度々今回の記事に上がってくる【フレデリック・ピゲ】が手掛けたムーブメントです。
今回のタイトルにもあるように教科書のような美しさとを持つ最高級のムーブメントです。
【ブランパン】がクオーツショックから立ち直る際に拘ったのはクオーツ時計には出来なくて機械式時計だからできる事でした。
その一つに「コート・ド・ジュネーブ」と言われる縦目の仕上が施されています。
一番上のスイスの地図を見ていただくとジュウ渓谷の下に「レマン湖」という湖があります。
この「レマン湖」の通称は「ジュネーブ湖」と言い、「コート・ド・ジュネーブ」とは湖の波が陸に押し寄せる繊細な様子が表現されています。
さらにその奥にはペルラージュ(真珠)の模様が所狭しと並んでいます。
ペルラージュという模様は手作業で付けられることも多く職人が一つずつ丁寧に作業します。
回転している機械を板に押し付けるのですが力が入り過ぎるとその一点のみ模様が濃くなったり、それぞれの円の中心から外れてしまうともちろん新しくやり直すことになります。
皆さま想像して頂きたいのが、500円玉に直径1mmのシールを綺麗に並べることを。
失敗したらやり直しというプレッシャーの中で作業することを。
ぜひ見比べてみてください。
30万円程のいわゆるエントリークラスの時計の裏側には全く装飾のない物が非常に多いです。
「コート・ド・ジュネーブ」はあっても「ペルラージュ」はなかったり、あっても間隔が広かったりしています。
そしてさらに注目して頂きたいのが、ムーブメントの面取りの部分です。
実は手作業で施されている面取りは、伝統的に非常に柔らかく気を遣いながら仕上げていきます。
力を入れずにリラックスした状態で何時間という時間を掛けて丁寧な面取りを行います。
だからこそ【ブランパン】の時計は超が付くほどの高級品と言えます。
まとめ
いかがでしょうか?
近年は「コスパ(コストパフォーマンス)」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」が追い求められている事で大量生産品があふれ、そのおかげもあり似ている商品で安価なものも出てきていると思います。
しかしながら一生モノの高級機械式時計くらいは時計のクオリティーやどのような伝統や職人の思いなどと向き合ってみるというのも面白いのでなないかと思います。
是非一度店頭で時計を見てみてください。
購入するかは置いておくとして、高級機械式時計の神髄に触れることが出来る体験になると思います。
また【ブランパン】でぜひご覧いただきたいブログ記事がありますので、こちらもご覧ください!
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