1960年代には、フランス海軍のダイバーたちに採用された「サブマリーナー」シリーズが登場し、チューダーの名声をさらに高めました。また、北グリーンランド遠征隊にも採用された実績があり、極限環境でも優れたパフォーマンスを発揮する時計メーカーとして確固たる地位を築いてきました。

英国北グリーンランド遠征隊（British North Greenland Expedition, BNGE）は、1952年から1954年にかけて実施されたイギリスの極地探検プロジェクトです。この遠征は、極寒の環境下での科学調査と軍事的な研究を目的としており、特に気象、地質、氷河学に関するデータ収集が行われました。

過酷な環境と挑戦

遠征隊は、北緯77度にあるグリーンランド北東部の氷床に基地を設営し、氷河や気象データを記録しました。極寒の気候（冬は-50℃以下に達することも）に加え、長期間の孤立生活を余儀なくされる過酷な環境の中で、隊員たちは慎重に研究と探検を進めました。

彼らは、雪上車や犬ぞりを使って移動しながら測定を行い、観測データを集めました。この遠征の成果は、後の気象学や極地探検技術の発展に大きく貢献しました。

チューダーとの関係

BNGEの隊員たちは、遠征期間中の時間管理のために腕時計を使用しており、チューダーの時計がその過酷な環境下での耐久性と精度を証明する役割を果たしました。彼らが使用したのは、チューダーのオイスターケースを採用したモデルで、極地でも正確な時刻を維持できることを証明しました。

この遠征からインスピレーションを得て誕生したのが、後の「レンジャー」モデルです。レンジャーは、シンプルで視認性が高く、タフなデザインが特徴で、探検やアウトドア向けの時計として多くの愛好家に支持されています。