クォーツショックから立ち上がった『ユリス・ナルダン』の名作天文三部作『ガリレオガリレイ』とは?
皆様、こんにちは。谷です。
以前は、『ユリス・ナルダン』の歴史についてお伝えいたしました。
下記のURLをクリックするとご覧いただけます!
https://www.jw-oomiya.co.jp/blog/osaka/115026
現在では、ユリス・ナルダンはイノベーションを行う時計ブランドですが、昔はマリン・クロノメーターや名作天文三部作を制作する複雑時計や高性能ウォッチを作るブランドでした。
今回はクォーツショック後に世界に衝撃を与えた時計『天文三部作』をご紹介いたします。
世界に衝撃を与えた『ユリス・ナルダン』の時計とは?
機能性や芸術性、意外性など世界に衝撃を与えると一言で言っても色々ありますよね。そんな中、時計業界ではかなり有名な『天文三部作』と呼ばれる物があります。
『天文三部作』は、3つの時計を合わせて呼ばれている総称であり、それぞれの時計にも名前がついています。
順番にご紹介いたします。
・アストロラビウム・ガリレオガリレイ(1985年)
・プラネタリウム・コペルニクス(1988年)
・テリリウム・ヨハネスケプラー(1992年)
その中でもっとも有名なモデルが『アストロラビウム・ガリレオガリレイ』です。
1983年に試作され、1985年に発表されました。この時計の評価されている点は多岐に渡ります。
今回はいろんな視点からそのすごさをご紹介していきますね!
天文時計を作成する人にもこだわった時計『ガリレオ・ガリレイ』
天文三部作を作成するにあたって、『ユリス・ナルダン』を買収したロルフ・W・シュナイダー氏が、天才時計師『ルードヴィッヒ・エクスリン』博士と1983年に出会います。『ルードヴィッヒ・エクスリン』博士は、バチカン王国のファルネーゼ天文時計(1725年製の時計)を4年かけて研究し論文を執筆していました。
それを知った『ロルフ・W・シュナイダー』氏の依頼でファルネーゼ・クロックを腕時計のサイズで設計する事となりました。
エクスリン博士は、考古学、古代史、ギリシャ語にも詳しく、時計にも詳しい。まさに『天文時計の第一人者』でもあるのです。
第1作目『アストロラビウム・ガリレオガリレイ』
今回のブログでご紹介する『アストロラビウム・ガリレオガリレイ』ですが、天文時計です。
天文時計とは、太陽、月、惑星、星座などの相対的な位置や関係性を示す特殊な装置と文字盤を持つ時計の事です。
『ガリレオガリレイ』ではあまりにも天文時計としての機能がありすぎるので、天文時計を代表する基礎機能を中心にご紹介していきます。
『ガリレオガリレイ』には、時針と分針以外に『太陽針』、『月針』、『ドラゴン針』の3つの針が設けられています。
その3つの針は、文字盤の中央を軸として取り付けられていますが、中央軸を貫通する長い針として取り付けられています。
例えば、ドラゴン針の頭と尾っぽは中央軸を挟んで反対側にあります。太陽と月の針も同じくです。しかし太陽針と月針には、一方の端に『太陽』と『月』のモチーフが施されていますが、針として読み取る先は『モチーフがない側』となります。
また、文字盤上には様々な連動して動くプレートが取付られており、一つは『黄道環』で、『黄十二宮』(星座)が記されたプレートです。もう一つは、赤道線で、いわゆる『カレンダー』が記されています。
更にはプレートには、シリウスやアンタレスなどの目安になるような明るい恒星も描かれています。
どの針もどのプレートも、それぞれのペースで動いているのが特徴です。
天文時計が示すもの①『現在の星座とカレンダー』
先ほどは文字盤に描かれている機能についてお伝えしてきました。今からはそれぞれの読み取り方をお伝えしていきます!
太陽針の先を読み解くと『何座』と『何月』かがわかる仕組みです。
天文時計が示すもの②『太陽と月の関係』
太陽針と月針の針先で、現在の太陽と月の位置がわかります。
時計を所有する方、お時計に詳しい方だと憧れる『ムーンフェイズ』は、太陽と月のずれを示すものです。
そのような意味では、ガリレオガリレイの時計は高性能な月齢表示をする事が出来ます。
例えば、「太陽と月の位置が同じ位置にある」状態なら、月が太陽を隠す『新月』です。逆に「月と太陽が対極にある位置」は月が地球から見て真正面で太陽の光を受ける『満月』になります。
更に、太陽針、月針、ドラゴン針が同じ方向(または真逆の位置にある)の時、日食や月食を示します。
『龍の頭のモチーフが月の針先を食べているとき』=『太陽針が真逆にあり、ドラゴン針と月針の針先が重なるとき』が『月食』で、『龍の頭のモチーフが太陽と月を食べているとき』=ドラゴン針・太陽針・月針の全ての針先が重なる時が『日食』です。
ドラゴン針は、太陽と月との地球の位置関係を示しています。
天文時計が示すもの③『日の出と日の入り』『月の出と月入り』
文字盤の上部と下部、更に中間部は白→グレー→黒と色が違います。
色が濃い下部は夜中、色が白い上部は日中、その間の薄いグレーじゃトワイライト(日の出、日の入り前の薄明り)をしめしています。
太陽針が日中、夜中、トワイライトのどの位置にあるのかによって現状の昼夜の状況がわかります。太陽針が日中とトワイライトの境目(黄道環)=地平線(水平線)ラインの左側を通る時が日の出、右側を通る時が日の入りのタイミングになります。
また太陽針でわかるように月針でも同じことがわかります。
月針とトワイライトの境目(黄道環)=地平線(水平線)ラインの左側を通る時が月の出、右側を通る時が月の入りのタイミングになります。
太陽針と月針が作る角度は、太陽と月が天空にある(私たちが見ている)角度と同じです。太陽針と月針が地平線より上にある時、天候が良ければ同じ角度・位置関係のまま浮かび上がります。
天文時計が示すもの④『恒星の位置』
文字盤の上にはメジャーな恒星が描かれており、12時側が南の設定で読み取ります。
日中は星々を眺めることが難しいので、太陽針が夜中を示す時間帯に読み取ることが必要です。
まとめ
ガリレオガリレイの時計のいくつかの機能をご紹介いたしました。
今回ご紹介した機能以外にも、『方角の表示』『不定時の表示』『夏至と冬至』『曜日』など様々なことがわかる時計となっております。
これだけ複雑な時計でありながら、144,000年分の天文情報が埋め込まれている時計でもあります。
その証に、1989年『アストロラビウム・ガリレオガリレイ』は世界一複雑な腕時計としてギネスブックにその名を連ねます。
いかがでしたでしょうか?
クオーツショックで時計業界全体が落ちこんんでいる中、彼らは未だかつてない機械式時計を制作しました。
その結果、多くのメディアや業界を超えた衝撃が走り、機械式時計を復興させる1つのきっかけとなりました。
複雑すぎて難しい時計ではありますが、とても面白いと思いますし、あの時代に現代と遜色ないクォリティーもはや上回って制作されているところを見ると本当にすごいですよね。
皆さまは、どう思いますか?