1931年に発表された「レベルソ」は、世界でも最も名の知られた時計のひとつとして数えられていて、「アール・デコ・クラシック」として、装飾アートのムーブメントの歴史にその名を刻んでいます。

ここでジャガー・ルクルトの歴史についてご紹介させていただきます。

スイスのカントン・ヴォーには、ジュラ山脈の海抜1,000メートル地点に、ヴァレー・ド・ジュウと呼ばれる峡谷があります。その名は精密に製造された時計を愛するものにとって特別の意味を持っています。この峡谷は、樹木でおおわれた丘陵を隔てて位置する2つの湖を従え、冬が長く厳しい事で有名です。家々は強い西風から身を守るようにして、金属でおおわれています。

16世紀、ユグノー達は宗教的迫害から逃れるために、誰も近づかない氷でおおわれてたヴァレー・ド・ジュウに身を寄せ、忍耐強く手工芸の技術を磨きはじめました。こうして精進する中、金属細工を特技としていた彼らは、オルゴール、自動装置、時計のムーブメントなどといった複雑な装置の初めての製作に成功しました。19世紀に入ると「コムビエ」と呼ばれるこの峡谷の住人達は、手作業による時計製造に関する技術をすべて取得し、技術の完成度は世界中の他を寄せ付けないものまでになりました。今日では、大勢の人々がヴァレー・ド・ジュウを世界最高峰の時計メーカーの故郷であると考えています。特にルクルト家は、たゆまない努力と不断の改良を通じて一躍有名になりました。ル・サンティエという町に落ち着いたルクルト家は、カミソリの製造から始まって。オルゴール、鍵盤楽器の製造に移り、最終的に高い精密度をほこる時計部品の製造に至りました。そして、ジャガー・ルクルトの時計製造の長い歴史が1833年に始まったのは、このル・サンティエにおいてです。ジャガー・ルクルトは、それ以来、一貫して時計を製造し続けています。

1803年、ルクルトの名を世界に知らしめることになった一人の男の子がル・サンティエに生まれました。それはシャルル＝アントワーヌ・ルクルトです。彼は、1559年にル・サンティエに落ち着いたピエール・ルクルトの末裔に当たり、父親アンリ＝ダビドは機械装置を製造する鉄工場を操業していました。彼はここで見習いとして働き、冶金、歯車、脱進機の技術を学び取りました。1833年になると彼はこの工場を離れ、弟のユリースとともにル・サンティエに時計の歯車を製造する会社を設立しました。彼は新しい製造工程と製造法の開発に、自らのエネルギーと工学的才能を注ぎました。彼が1844年に製作したミリオノメーターは、部品を最も近いミクロン（1メートルの100万分の１）で測定することのできる最初の装置となりました。会社は成長を続け、時計の半完成品ばかりでなく、精密部品をも製造するまでになって、1860年までには従業員の数が100名に達していました。アントワーヌ・ルクルトの息子、エリー、ポール、ベンジャミンは、父親と同じ道に進みました。ルクルトは複雑なムーブメントの製造にいち早く着手し、リピーター、クロノグラフ、カレンダー付きムーブメントを他に先駆けて製造しました。会社の規模は、エリーの息子「ジャック・ダビド・ルクルト」が会社に入った1899年までに、メーカーとしてヴァレー・ドゥ・ジュウ最大となっていました。アルザス地方でクロノメーターを製造する「エドモンド・ジャガー」との事業提携を1903年にパリで結んだのは彼でした。この提携がきっかけとなって、ルクルトに高級市場への道が開かれ、高級時計のシンボルであるジャガー・ルクルトの名前が生まれることになり、1937年「ジャガー・ルクルト社」となりました。