2012年にダトグラフ アップ/ダウンの名でリニューアルし、ゼンマイ巻上げのパワーリザーブ表示機能が追加されました。

パワーリザーブは60時間、その残量を6時位置にあるパワーリザーブ表示が知らせます。この円弧の両端に書かれたAUFとABはドイツ語でアップ/ダウンを意味します。

完成された機能美

コラムホイール制御方式やフライバック機構、プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターをはじめとする最高水準の技術、そしてダイヤルとキャリバーのデザインに光る秀逸の美学が相まって、ダトグラフは、数ある機械式クロノグラフの中でも、別格の存在となっています。

アウトサイズデイトと、ミニッツカウンターおよびスモールセコンドの二つのサブダイヤルが正三角形をなすレイアウトによって、ダイヤルに調和感が生まれ、同時に優れた視認性をもたらします。

スイスの時計技師アンリ・フェレオール・ピゲーが考案したと言われるフライバック機構。

このフライバック機構は、指針を瞬時にあるポイントまで戻す機構です。クロノグラフの計測後に秒針を瞬時にゼロ点まで戻したり、間髪入れずに新しいタイムの計測を開始することができます。いわゆる停止・リセット・再スタートという三つの手順を一度に済ますことができる便利な機能で、フライバックのないクロノグラフでは、上記の三段階の手順を立て続けに行わなくてはなりません。

この高度な追加機能のアイデアは、航空機の航路決定にはまだ地図と時計を使っていた時代に生まれたものです。当時は、不測の事態に迅速に対応しなくてはならない状況が頻繁に発生していたのです。しかし、電子機器の普及とともに、主にパイロットが利用していたこの歴史的な機能は次第に忘れ去られていきました。

ランゲのクロノグラフでは、そのフライバック機能が新設計のメカニズムに生まれ変わって見事なカムバックを果たしました。

文字盤の12時位置のわずかなスペースに大きく表示されているランゲのアウトサイズデイト。

これほど大きな日付表示を腕時計に組み込むことにランゲが初めて成功しました。

日付を表示する数字が、同じようなサイズの腕時計と比べてほぼ3倍の大きさになっています。

これは視認性が大きく向上するとともに、操作も簡単になっています。

日付を設定するのは通常のように、リューズを使用しません。ケースサイドに設けられたワンタッチ調整プッシャーを押して日付を1日ずつ先に進めます。

各種表示をこのように特殊なレイアウトで配置するには、ムーブメントの中で極めて長く細いレバーが必要となり、設計技師の豊富な知識と優秀な腕が要求されます。長年培った経験と、完璧な技術を模索し続ける弛みなき努力によって、なんと451個の部品から完成された、最高の精度で機能するメカニズムが生まれます。

最善の歩度を保証するのが、偏心錘付きテンプとフリースプラング式ヒゲゼンマイを搭載する自社製の調速機です。時計技法の粋を集めたこのマスターピースが、その魅力を余すことなく見せてくれるのは、クロノグラフメカニズムが起動して、多数のレバーやデテント、歯車が複雑に絡み合って動き始める瞬間です。この圧倒される迫力のクロノグラフムーブメントがいつでも眺めることができます。

クロノグラフの最高傑作とも名高い「ダトグラフ・アップ/ダウン」。ぜひこの機会に店頭でご覧ください。

記：渡辺