超絶技術「トゥールビヨン」の考察 〜 タグ・ホイヤー キャリバー02T 〜

皆様、こんにちは。

渡辺です。本日は「複雑時計ってなんだろう？」ということから、少しかたいお話をさせていただきます。『複雑時計って何だろう？』

よく私はクロノグラフの説明をする時に、「クロノグラフは複雑時計です」ということを説明させていただきます。電子回路がなくスタートストップリセット機能を全て歯車で構成され制御されています。たくさんのパーツで構成されいますと説明をすると、驚かれるお客様も多いです。

「複雑時計」とは、時計に計時機能以上のものを与えたものが「複雑時計」と呼ばれます。

今日では、世界三大複雑時計と検索すれば「トゥールビヨン」「ミニッツリピーター」「パーペチュアルカレンダー」が多く出てきて、この3つが複雑時計との見方が一般的です。

コンプリケーション（複雑時計）の定義

1、複雑な機能を持つ時計
2、複雑な機構そのもの

この定義から見ても、厳密にはトゥールビヨンはコンプリケーションとは言えません。

●コンプリケーションの3分類
（FRANCOIS LECOULTREの分類「LES MONTERES COMPLICATION」による）＝技術の「系」を重視した分類

「クロノグラフ系」
1、デッド・ハンド（インディペンデント・セコンド）
2、フードロワイアント（ジャンピング・セカンズ）
3、クロノグラフ
4、クロノグラフ・ラトラパント（＝ラトラパンテ、スプリット・セカンド）

「リピーター系」
1、クォーターリピーター[時（低音）、15分（低音・高音）]
2、ドゥミ・キャール（ハーフクォーター）〔時（低音）、15分（低・高）、7.5（高）〕
3、5ミニッツ・リピーター〔時（低音）、5分（高音）〕または〔時（低）、15分（低・高）、5分（高）〕
4、ミニッツ・リピーター〔時（低音）、15分（低音・高音）、分（高）
5、グランド・ソヌリー（ミニッツ・リピーターに加えて、毎正時と毎15分に自動的に鳴る）
※プティ・ソヌリー（ミニッツリピーターに加えて、毎正時に自動的に鳴る）
※カリヨン（カテドラル）三つまたは4つのゴング、ハンマーで15分を鳴らす

「カレンダー系」
1、シンプルカレンダー
2、永久カレンダー
3、ムーンフェイズ
4、イクエーション（均時差表示）

また、以下の3つの分類にもできます。
（DIMITRIS XANTHOSの分類『LEXIQUE DU GENIE HORLOGER』による）＝表示の『系』を重視した分類

1、表示系（リピーター＋ジャンピングアワー）
2、天文学系（カレンダー系）
3、機能系（クロノグラフ系＋ワールドタイマー、パワーリザーブ、アラーム）

これが時計製作者の認めるすべてではありませんが、これ以上に新たに複雑時計が生まれる可能性もあります。複雑時計の定義は時代によって変わっていきます。

複雑時計というのは、時計に複雑な「機能」を加えたものであり、正確さを出すための複雑な「機構」そのものであり、トゥールビヨンはこれにあたりません。

でも複雑な機能を実現しない複雑さそのものがある、トゥールビヨンという存在に、なんらかの意味があるんだと思います。

トゥールビヨンの役割は、まず、機械式時計はその使用の状態から考えて、持ち主が一定の姿勢を保っていることはできません。持ち主の姿勢が腕時計の姿勢に影響を及ぼすことは避けられないのです。そしてこの姿勢の違いは、精度に微妙な影響を及ぼします。つまりムーブメントにかかる重力の方向が変化することによって誤差を生じるのです。影響を受けるのはバランスホイールです。重力のかかる方向によって、小さなバランスホイールの動きがわずかに促進、あるいは妨げられます。姿勢値誤差と呼ばれるこの障害を解消するのがトゥールビヨン機構です。

トゥールビヨンでは、時計の精度を左右する脱進機構と調速機構が小さなキャリッジ（枠）に納められ、このキャリッジは一定周期で一定方向に回転します。