自動巻きの時計を選ぶ時はここもチェック?巻き上げ機構について解説
巻き上がったゼンマイがほどける力を利用して動く機械式時計。
機械式時計はリューズ操作によりご自身でゼンマイを巻き上げる【手巻き】と、時計着用中の腕の振りによってゼンマイが巻き上げられていく【自動巻き】があり、趣味性の強い手巻きの時計に比べ、実用性に優れた自動巻きの時計が現在は多く販売されています。
今回のブログでは自動巻きに焦点を当ててご説明いたします。
自動巻きのメリット・デメリット
メジャーブランドであっても手巻き式のムーブメントを搭載したモデルが製造されていなかったり、1部のモデルのみのラインナップというブランドは多数あります。
その為、自動巻きの時計の方がブランドやモデル、デザインを選ぶ際の選択肢が多いといえるでしょう。
また腕に着用している間はゼンマイが巻き上がるので、毎日時計を着用していると止まることは少なく、巻き上げ残量が少ないと機械式時計の精度は不安定になりますが、常にゼンマイが巻き上げられている自動巻きの精度は安定しやすく、手巻き式の時計と比較して高精度といっても過言ではありません。
デメリットとしては自動巻き機構により部品が多くなるので、厚みや重さでてしまうところや、振動数が高いモデルが多いので手巻き式の時計よりも摩耗が早く、オーバーホールなどのランニングコストはやや割高になることも考えられます。
自動巻きのローターについて
シースルーの裏蓋になった自動巻きの機械式時計、まず目に入るのが半円状のローターではないでしょうか。
ローター【ROTOR】‥日本語にすると(機械の)回転子、回転部という意味になり、このローターが左右に振れることによりゼンマイが巻き上げられて、巻き上げられたゼンマイが元の状態に戻ろうとほどける際に発生するエネルギーを利用して、時計は時刻を刻みます。
自動巻きの時計を進化させたブランドはロレックス、1931年にパーペチュアル機構を発明する以前の自動巻き機構のローターは半回転しかしませんでした。
360度ローターが回転するパーペチュアル機構により、自動巻きの巻き上げは大幅に改良され、機械式時計は手動でゼンマイを巻き上げる手巻き式→腕の振りによって着用中にゼンマイが巻き上げられていく自動巻きが主流となっていきます。
一括りに自動巻きといっても、その巻き上げ方は様々です。ここからはローターの種類や巻き上げ方式についてご案内いたします。
【センターローター】
自動巻きの時計の大多数に採用されているセンターローター。
ムーブメントの半分に及ぶ大きなローターは、小さな腕の振りでも十分に巻き上がるという実用性が魅力になります。
近年は1部がくり抜かれたローターや、ゴールドやプラチナといった高級素材のローターなど、視覚的にも楽しめるセンターローターが増えてきました。
【マイクロローター】
小ぶりなローターを採用することで、ムーブメント内にローターが収まり、直径を大きくせずにムーブメントの高さを抑えられる点が、マイクロローターの魅力です。
巻き上げ効率に難ありですが、薄型の時計が好みの方やムーブメントの美しさを重視する方にお勧めです。
【ペリフェラルローター】
ブルガリやピアジェ、カール F・ブヘラといった一部のブランドでのみ採用されているペリフェラルローター。
外周にローターが付いているため、ムーブメントは大型になりますが、薄型で巻き上げ効率も損なわれていないところ、また手巻き式の時計のようにムーブメントが鑑賞できるところが魅力になります。
マイクロローターやペリフェラルローターは採用しているブランドも多くないので、オリジナリティを求める方にもぜひお勧めです。
自動巻きの巻き上げの違い
【リバーサー式】
リバーサー(切り替え車)は初期の自動巻きから最も多く採用された巻き上げ方式になり、量産可能で充分な巻き上げ効率が期待できます。
ローターから伝わる回転力をいくつかの小さな歯車の組み合わせによって切り替えつつ減速し、香箱(ゼンマイが収納された歯車)に伝わる力を一方向に整える仕組みになります。
【ラチェット式】
IWCやセイコーが得意とする爪でゼンマイを巻き上げる自動巻き機構になります。
水平方向にスペースが必要なため、ムーブメントの直径は大きくなりますが、シンプルで部品点数が少ない構造は耐久性と巻き上げ効率の良さを両立してくれます。
【スイッチングロッカー式】
左右に傾きを変える歯車を採用するスイッチングロッカー式は、ローターの両方向回転を一方向に整えゼンマイを巻き上げます。
コンパクトで摩耗しにくいといったメリットがあり、過去には高級ブランドが好んで採用していた巻き上げ方式になり、現在はブルガリやノモスのムーブメントが挙げられます。
最後に
自動巻きの時計を長年使用しているとローターが外れて異音がしたり、リューズで手巻きを行うとローターが一緒に回るといった不具合が発生することもあります。
日中ずっと着用して、夜に時計を外した後、翌朝には止まっていたというような巻き上げ効率の低下でご来店されるお客様も多くいらっしゃいます。
部品数が多く、振動数も高いモデルが多い自動巻きの時計は実用的ではありますが、手巻きの時計と比較するとメンテナンスサイクルが早くなることもございます。
巻き上げ機構に不具合が発生すると、折角の実用性も損なわれてしまいます。時計は不具合が発生してしまう前に、ぜひ定期的なメンテナンスを心掛けましょう。