正統派ミニッツリピーター
腕時計のソヌリ機構の中でも、ミニッツリピーターは精密時計をつくる上で最も難しく奥が深い複雑機構です。この機構は、時刻を分単位の正確さで打ち鳴らします。A.ランゲ&ゾーネにおけるミニッツリピーターの歴史は19世紀末の懐中時計の時代に遡ります。2013年には、ラトラパント・クロノグラフや永久カレンダーなどの魅力的な機能を多数搭載するグランド・コンプリケーションでミニッツリピーターを復活させ、時計業界の注目を集めました。
その2年後にはデジタル表示された時計の数字と打鐘数が一致するツァイトベルク・ミニッツリピーターを発表しました。
そして今回コレクションに加わるリヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーターでは、複雑機構をハンマー打ち機構だけに絞り込んでいます。
1分ごとに異なるメロディー
リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーターのハンマー打ち機構は、ケース側面に取り付けられたスライダーを操作すると時、正15分、分の数を打ち鳴らすという伝統的な打鐘形式に基づいて設計されています。この機構は、高音と低音に調律された2つのゴングが12時間周期で1分ごとに異なる打鐘シーケンスで時刻を奏でるようにプログラミングされています。つまり打鐘のパターンは720通りあるのです。
低音で時、重複音で正15分、そして高音で最後の正15分から経過した分を表します。
リピーターを作動させてムーブメントを覗けば、光沢研磨によって鮮やかに輝くハンマーが、ムーブメントをぐるりと囲むゴングを打鐘シーケンスに従って打つ様子を見ることができます。ラック、カタツムリ形カム、レバー、歯車が芸術的ともいえる見事な連携で、191個の部品からなりたつこの機構の制御を司ります。
最高レベルの音質を求めて
リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーターは、最高レベルの温室で時刻を奏でるように設計されています。そのため、ゴングをチューニングする労力と時間は、楽器を厳密に調律する作業に匹敵します。
明るく澄んだ音を響かせるために手作業でゴングとプラチナの音響特性をあわせていきます。ハンマーについては、素材、形状、大きさ、重さ、硬さに加えて、ピアノと同じようにタッチが重要になります。ランゲ工房の時計師が、すべての部品を相互に慎重に調整します。部品を組み立てては解体し、部品を再加工して組み立てなおしてはテストをするという作業を何度も繰り返し行い、時間をかけて仕上げることで、完璧な音響を作り出すことに費やされています。
ブラックポリッシュで仕上げられた新しいムーブメント
新しい手巻きのムーブメントL122.1は、ハンマー打ち機構の一部が見えるようになっていますが、そこに施された仕上げのディテールは圧巻です。ハンマーは難易度の高いブラックポリッシュで仕上げられ、手作業で慎重に曲げたゴングも鮮やかに研磨されています。ハンマー打ち機構のすべての受けにサンバースト仕上げを施し、視覚的にも統一感を出しています。
このムーブメントは、A.ランゲ&ゾーネのムーブメントとして69個目の自社キャリバーであり、チラネジテンプやフリースプラング式ブレゲ・ヒゲゼンマイを備えています。調速機は毎時21.600振動(3ヘルツ)で作動し、香箱は完全に巻き上げた状態で72時間のパワーリザーブを有します。