世界中が注目する時計の祭典、SIHH(ジュネーブサロン)とバーゼルワールド。1月、そして3月にこちらで発表された数々の新作が、初夏に続き、いよいよ本格的に店頭に出揃うシーズンの到来です! 時計ファンの方達にとっては、雑誌やwebに掲載される写真を通して気になっていたモデルを実際に目にして、さらに触れられる瞬間は、至福の時ではないでしょうか。
かくいう僕も、これらの時計の祭典を現地に赴いて取材してはいるものの、この時期に改めて魅力的な新作と再会すると、一人の時計ファンとして心がワクワクするものです。
実用として欲しくなる個性的な秀作の数々
今年は、SIHHでは会期中の最終日を初めて一般公開する取り組みや、バーゼルワールドでは出展社数が減少するなど、不安定な世界情勢を反映したかのような側面が見受けられました。しばらく続いた時計の価格高騰による消費の冷え込みも大きな要因といえるでしょう。
しかし、振り返ってみると、こうした状況に対するブランドやメーカーのひとつの回答とも言える、“100万円前後”、また“50万円以下”の価格帯で魅力的なモデルが充実していたように思えます。
ただし、ここで僕がお伝えしたいのは、
「手が届く価格帯のものが増えたから良かった」のではなく、
「『欲しい!』と気持ちを高揚させる様々なアプローチが、手が届く価格帯において、“デザイン”や“機能”、そして“素材”に“色”などの形でそれぞれ充実していた」ということです。
例えば、オメガのスピードマスター誕生60周年やタグ・ホイヤーのオウタヴィアに代表される多彩な節目を祝した“復刻”や“記念(アニバーサリー)”モデル。また、男性時計ファンにとって垂涎の機能ともいえるクロノグラフにおいては、ブライトリングやゼニスなどから“新しいムーブメントの高機能クロノグラフ”。さらに、ボーム&メルシエのように、機械式よりも身近に楽しめる新たな選択肢としての “クォーツ”。他にもグリーンやレッドなど、これまであるようで実は見かけることの少なかった“鮮やかな色遣い”。そして、高い精度に加えて、精緻な造形や仕上げが施されたムーンフェイズなど。そうそう、昨年から見かけることが多くなったエイジング加工は、ダイヤル(インデックス含む)のみならず、ケースにストラップ、ブレスまでと、より多彩に施されたモデルが登場してきたのも印象的でした。