2017年の新作が出揃うまで、時計業界は一般ユーザーが時計を選びにくい環境にあった。複合的な理由があるが、価格の高騰が最も大きな懸念事項だったろう。中国経済の活況と共に、より付加価値の高いもの、より希少なものの需要が高まったのだから仕方のない話ではあるが、我々がリアルに検討できるような時計は数えるほどしかなかったと言える。
それが、2017年のSIHHから転換期を迎えた。その段階では、“兆し”程度の認識だったが、カルティエが明らかに自社のメイン顧客を想定したパンテールを手頃な価格で復活させたり、ジャガー・ルクルトが2016年のレベルソコレクション一新から早くも、人気の手巻きをラインナップしたりと風向きの変化があったのだ。そして、これは3月のバーゼルで大きなうねりなのだと確信に変わる。
いま、魅力的な時計は50万円くらいまでのゾーンで発表されている。これまでは市場的にも“死んでいた”ゾーンであるが、時計愛好家の皆さんにおいては再び目を向けることをオススメしたい。明らかに、自社のR&D(研究開発)の成果を感じられる時計が見つかるはずだ。