全身ヴィンテージはコスプレっぽい!
古い洋服には新しい時計を合わせたい
最近ヴィンテージが熱いらしい。僕は古着もあまり着たことがないし、時計もその手のモノにはまだ手を出していない。ところが今、現在よりも作りが優れているとさえされる過去の名品たちが、脚光を浴びているというのだ。しかも一部のコレクターズアイテムを除いて、価格も安いことが多い。ならばこのブームに少しだけ乗ってみようということで、この度ヴィンテージのバーバリートレンチを購入してみた。(新品を買うと20万円ほどだが、このたび5万円弱くらいで購入できた)今回は、話を時計にまで飛躍させて、古い名品を買うときに自分なりに思ったことをお伝えしたい。
さて、まずは僕の初めてのバーバリーだが、概ね80年代のものだそう。さすが天下の王室御用達ブランドというべきか、まだまだ現役と言わんばかりのしっかりとした作りで、やや大振りな形も逆に今っぽくて良い。ディテールに目を向けると、肩のエポレットや襟の裏側についているチンストラップ、ベルトのD環などそれぞれに機能のある付属品が、お飾りでなく作り込まれていることに気付く。男子たるもの、これには確かに物欲を刺激されてしまう。本格的物作りはいつでもオトコの心を打つのです。
トレンチコートというと、春先に着るような薄手で軽いものを連想する人も少なくないと思うが、このバーバリーは非常に重い。ただし、袖を通してみると意外にもその重さは感じなくなり、体全体を保護してくれている気がしてくる。軍用ルーツのコートは、やはり漂ってくる信頼感が違う、、。などと思っていると、これは時計におけるヴィンテージを手にしたときとそっくりな感想であることに気付く(実際に購入したことはないが)。 現代の時計を手にしても感じないことだが、50年代のヴィンテージ、たとえば当時のタグ・ホイヤー カレラやブライトリング ナビタイマーなどを手にすると、そこに時計たちが実用計器として使われた痕跡を感じることができる。つまりリアリティだ。圧倒的なまでの本物力にたちまち虜になってしまい、身の回りを全てこうした歴史に根差したものでいっぱいにしてしまいたくなる。その瞬間に、一つ思い出してほしいことがある。”ちょっと待って、一旦冷静に”。
そのまま全身ヴィンテージ尽くしになるのは危険だ(そこまで極端な人も少ないと思うが)。芸能人のように、個性でメシを食っているような人なら話は別だが、こうしたリアリティのあるものはある種のコスプレだからだ。僕もバーバリーを手にしてどうやって着こなそうと考えたときは相当に苦労した。ひとつ思いついたのは、腕時計の力を借りよう、だ。
ディテールや機能は過去のリアルさであって現代のものではない。時計にしてもヴィンテージモデルからインスパイアされたものは数多くあれ、その多くが現代のムーブメントになっていたり、使われる素材が進化していたりする。(今年復刻がでたが、ブライトリングのナビタイマーなどは好例)
だから、時計好きの皆さんに僅かばかりでも心に留めてほしいのが、ヴィンテージの時計をするならばある程度最新のトレンドも取り入れた洋服をセレクトすることだ。(服については、それはそれで深い世界なので、なじみの店を作るのが最もおススメな方法) 一方で、ヴィンテージの服を着るならば、やはり時計や小物は最新モデルで合わせるのがいいだろう。ちなみに僕は、80年代のバーバリーにあっさりとしたトム フォードの時計をコーディネートしたりしている。ヴィンテージテイストに、やや男くさいモードブランドの香りをプラスしてみたつもりです。他には、カルティエのサントスMMや最新顔のIWCパイロット・ウォッチ トップガン3針などもマッチしそうだ。
名品を持つのは男のロマンだし、それ自体は僕も大賛成だ。しかしそれが第三者が見たときにコスプレになっていないか意識することもとてもたいせつだと思う。ヴィンテージアイテムを身につけてもうまくまとめられれば、それはコスプレでなくもはやアナタの個性だ。こうなれば、アナタの個性の秘訣を聞きたい方々と話が盛り上がるかもしれない。そしてもし、年代物のコートやスーツがタンスの肥やしになっているのならば、時計を新調してそれらと合わせてみても面白いと思う。埃をかぶっていた洋服が、モダンな時計と合わさることで突然良い味を出した名品に見えてくるだろうから。